おねしょ(夜尿症)とは
夜尿症とは、5歳以上の子どもが月に1回以上の頻度で、就寝中のおねしょが3か月以上続いてしまっている状態を指す病気です。5歳になる前におねしょがあっても生理的な範囲と考え、経過を見ていきます。5歳以上の子どもの約6%に夜尿症があるとされており、決して少なくはない病気です。
夜尿症があることで、自尊心が下がってしまう、宿泊行事に行きづらいなどの問題があります。また、親御さまの負担もとても多いです。早期に治療介入した方が早く良くなる傾向がある病気であり、そのまま様子を見るのではなく、子ども自身や家族が悩んでいる場合は積極的に治療していきましょう。
このような症状がある方はご相談ください
- 5歳を過ぎても、月に数回以上のおねしょが続いている
- 就寝中に無意識に排尿してしまい、朝まで気づかないことが多い
- 昼間は排尿をコントロールできていて、日中のおもらしはない
- 夜中にトイレへ促しても、すでに布団が濡れてしまっている
- 数日間おねしょが止まっても、また再発することがある
- 寝ついた直後や、ぐっすり眠っている時間帯におねしょが起きやすい
- おねしょの量が多く、パジャマやシーツまで濡れてしまう
- 本人は気づかず、朝にご家族さまが気づくことが多い
- お子さまが恥ずかしがったり、気にしている様子がある
- お子さまやご家族の方がおねしょを早く治したいと思っている
など
おねしょ(夜尿症)の原因
夜尿症は、尿意を感じても目を覚さない(尿意覚醒困難)という背景がある上に、尿の濃縮力が不十分であり夜間の尿量が増える(夜間多尿)、膀胱に尿が溜まると勝手に尿が出てしまう(蓄尿量減少)という2つが重なることで発症します。
また、夜間のおねしょに加えて、昼間のおもらし、便秘、異常なのどの渇き、体重減少など、他に症状がある場合や突然発症した夜尿症などは、他に病気が隠れている可能性もあるため早めの受診をお勧めします。
おねしょ(夜尿症)の診断方法
まずは問診を行います。夜間のおねしょが生まれてからずっとあるか、昼間のおもらしの有無、排便状況、その他の症状などを確認します。身体診察に加えて、尿検査は夜尿症を疑う場合は必ず行います。それ以外の検査は必要時に行っています。
おねしょ(夜尿症)の治療
生活習慣の改善と便秘の治療を行います。これらの対応で十分な改善が見られない場合には、追加の治療を検討します。
追加治療には、薬物療法(デスモプレシンなど)とアラーム療法があります。いずれも有効性の高い方法ですが、それぞれにメリット・デメリットがあるため、お子さまの状況に合わせて最適な治療法を選んでいきます。これらを併用することも可能です。
さらに、治療効果が不十分な場合には、デスモプレシン以外の薬剤の使用も選択肢となります。
それでも改善が見られない難治例の場合は、専門の医療機関をご紹介いたします。
生活習慣の改善
初診の場合は、まずは生活指導を行います。
- 就寝は夕食後2時間以上空ける
- 水分はできるだけ昼食時までに多く取るようにする
- 夕食以降は水分を可能な限り少なくし(200ml程度)、間食(アイス、果物など)はしない
- 就寝前にトイレに行って、膀胱を空っぽにする。30分以上寝付けない時は再度トイレに行く。
- 寝る間にスマホやゲームなどでブルーライトを浴びないようにする
- 夜間に無理やり起こしてトイレに行かせることはしない
また、問診や身体診察から便秘が疑われる場合は便秘治療を先に行うこともあります。次回の受診までに排尿、排便日誌をつけてもらいます。
薬物療法(デスモプレシン)
抗利尿ホルモンという薬で、尿を濃縮して、尿量を減らす効果があります。夜間多尿のタイプに効果が期待でき、アラーム療法よりは効果を比較的速やかに感じやすいです。宿泊行事などに携帯していくことが可能です。ただし、内服後に水分をたくさん摂ってしまうと水中毒というミネラルのバランスを崩してしまう状態になり注意が必要です。保険診療内で治療可能ではありますが、治療期間が年単位と長くなることが多いです。内服を中止しても再発するリスクがアラーム療法より高いです。
アラーム療法
おねしょした場合にアラームが鳴り、覚醒させることで徐々に膀胱に尿を溜める量が増え、夜間の尿量、尿回数が減っていくという治療方法です。即効性はありませんが、治療期間が比較的短く(2~6か月)、中止後の再発が少ないです。アラームが鳴っても起きない場合は、親御さまに起こしてもらう必要があります。この治療方法は、親子共に負担があるため、途中で脱落するケースはデスモプレシンでの治療より多いです。また、保険診療外であるため、自己負担金が発生します。
おねしょ(夜尿症)のよくある質問
おねしょ(夜尿症)と便秘症は関係ありますか?
便秘はおねしょのリスクになります。直腸という肛門の近くの腸に便が溜まると、直腸の前にある膀胱を刺激し、膀胱容量も少なくなります。便秘の治療をすると、おねしょがなくなるケースも多いです。毎日便が出ていても、コロコロした固い便であったり、かなり息まないと便が出なかったりする場合は、便秘症である可能性は十分にあります。便秘は夜間だけでなく、日中の頻尿の原因になることもあります。
薬物療法とアラーム療法はどちらがお勧めですか?
どちらの治療も効果が期待できる治療方法ですが、全く異なる方法でもあるためお子さまの性格や生活状況、親御さまの希望も含めてその都度相談して決めていきます。排尿日誌をつけてもらい、夜間多尿が主な原因と判断した場合は、デスモプレシンの内服から開始することが多いです。
おねしょ(夜尿症)の治療はどのような状態になれば中止できますか?
デスモプレシンの場合はおねしょがない状況が続いた場合は薬を徐々に減らしていきます。一気に中止すると再発する可能性が高いため、1~2か月毎に徐々に減らしていき、最終的に中止します。
アラーム療法の場合は、アラームが鳴る時間が徐々に明け方になってくると効果が出ていると判断できます。さらに、徐々におねしょの頻度が減り、全くない日が連続して続くようになります。2週間程度連続しておねしょがなければ、あえて就寝前に水分摂取をします。それでもおねしょがなければ中止を検討します。