食物アレルギーとは
食物アレルギーとは、特定の食べ物や飲み物を摂取したり、触れたりすることで、様々なアレルギー反応が現れる病気です。全年齢で1%程度、乳幼児では5~10%の有病率と言われています。
子どもの食物アレルギーの多くは、成長に伴い原因食物が摂取できるようになることが多いですが、適切な対応が行われないと、摂取できるタイミングが遅くなったり、不必要な摂取を続けてしまったり、重篤な症状が出てしまったりするなどの弊害もあるため注意が必要です。
食物アレルギーの原因
代表的な原因食物は、鶏卵、牛乳、小麦、木の実類、ピーナッツ、魚卵、甲殻類、そばなどがあります。年齢により頻度が異なり、0歳時では鶏卵、牛乳、小麦が95%を占めています。1~2歳以降では木の実類(特にクルミ、カシューナッツ等)、ピーナッツ、魚卵(いくら等)が増え始めます。学童期以降ではこれらに加えて甲殻類(えび等)が更に追加されてきます。
近年の特徴としては、木の実類が年々増加傾向にあり、特にクルミは2024年の調査で鶏卵に次いで原因食物の第2位となっています。クルミはアナフィラキシーという重篤な症状を引き起こしやすい食物でもあり、誤食に関しても注意が必要です。
食物アレルギーの症状
食物アレルギーの症状は皮膚症状を始め、呼吸器、消化器など様々な場所に出現します。一番多いのは皮膚症状で約9割に認めると言われています。
即時型アレルギーとも呼ばれ、多くは食べた直後から30分以内(遅くとも2時間以内)に症状が現れます。
複数の臓器にわたって、重い症状が現れる症状をアナフィラキシーといいます。更に血圧低下や意識障害を伴う場合はアナフィラキシーショックといいます。
アナフィラキシーの症状は短時間に重篤な状態になり、命に関わることもあるため、速やかに適切な対応(アドレナリンの筋肉注射など)が必要になります。アナフィラキシーが疑われる場合は早急に医療機関に受診するか救急車を呼びましょう。
特殊な食物アレルギー
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食物を食べた後に運動することでアナフィラキシーが起きてしまう病気です。食物を食べただけでは症状が出ないことが特徴です。運動に加えて、体調やストレスなども関連していると考えられています。食後2時間以内に運動すると症状が出ることが多く、学童期以降に多い病気です。
口腔アレルギー症候群
特定の果物や野菜、豆類などを食べた後に、口唇や口の中、のどに違和感やかゆみが出る病気です。食品は生で摂取する場合に発症し、食物を加熱すれば症状は起きにくいとされています。
※果物アレルギーの中には加熱してもアナフィラキシーを起こすものもあるので注意しましょう。
花粉・食物アレルギー症候群
花粉にアレルギーのある人が、花粉と似たアレルゲンをもつ果物や野菜、豆類を摂取した後に症状が出る場合は花粉・食物アレルギー症候群といいます。
ラテックス・フルーツ症候群
ゴム(ラテックス)アレルギーがある人が、アボカド、クリ、キウイ、パイナップル、バナナなどを摂取すると症状が出る場合をラテックス・フルーツ症候群といいます。
食物蛋白誘発胃腸炎症候群(FPISE)
原因の食物を摂取後1~4時間で嘔吐し、その後下痢などの消化器症状が起こります。このアレルギーでは、消化器症状のみが現れることが特徴です。また、元々問題なく摂取できていた食物で、突然症状を起こす場合もあります。原因食物は、新生児期から乳児期は牛乳が多く、乳児期後半からは卵黄、大豆、小麦などが挙げられます。このアレルギーに対しては、通常のアレルギーで使用する抗ヒスタミン薬やアドレナリン注射は効果がありません。症状が重い場合には、点滴による水分補給(補液)を行う必要があります。
基本的には原因となる食物を一時的に除去する対応が必要になりますが、時間の経過とともに再び食べられるようになるケースが多いのも特徴です。
食物アレルギーの診断・検査
まずは問診がとても重要になります。疑われる原因食物の摂取量や調理形態、摂取後から症状出現までの時間経過、出生後からの栄養方法、皮膚の状態、既往歴、家族のアレルギー歴などを詳細に確認していきます。近年では、乳児期早期からの湿疹が食物アレルギー発症のリスクになることが明らかとなっており、速やかに湿疹をコントロールする必要があります。
血液検査を行うことで診断の補助になり、臨床経過の評価も行うことができます。ただしこの検査は、数値が陽性でも実際に症状が出るとは限らないため、検査結果の解釈を誤ると、必要のない食品除去に繋がってしまうことがあります。
食物アレルギーの管理・治療
食物アレルギーの管理の原則は、「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去」とされています。将来的に食べられるようになるためには、不必要な除去はせず、食べられる量を積極的に摂取することが重要です。摂取量を増やす際には、原因食物により自宅で少量ずつ増やすか、経口負荷試験を行うか判断していきます。
症状が出てしまった場合は、状況に応じて対応します。じんましんやかゆみに対しては抗ヒスタミン薬の内服を行い、咳や喘鳴に対しては気管支拡張薬の吸入を行います。アナフィラキシーと診断した場合は、アドレナリンの筋肉注射が必要になります。以前にアナフィラキシー症状が起きたことがあるお子さまは、アドレナリンの自己注射(エピペン)を処方します。処方する場合は、使用方法や使用するタイミングについて詳しく説明します。
食物アレルギーのよくある質問
食物アレルギーが心配なので、アレルギーになりやすい食物を食べさせることを遅らせた方がよいですか?
特定の食物の摂取時期を遅らせることは推奨されていません。鶏卵に関しては早期摂取することでアレルギーが予防できることがわかっています。全ての食物に関しては、適切なタイミングで少量ずつ摂取を開始することが原則です。細かな食物に関しての相談は乳幼児健診や通常の外来でも対応させていただくことが可能です。
母親(父親)が鶏卵アレルギーですが、子どもも鶏卵アレルギーになりますか?
必ずお子様が鶏卵アレルギーになるとは限りません。家族に何かしらの食物アレルギーの既往がある方がいても、通常通りに離乳食は進めていきましょう。
生後5か月ですが、体に湿疹があるので離乳食の開始を遅らせた方がよいでしょうか?
湿疹がある場合でも離乳食(特定の食物)の開始を遅らせる必要はありません。しかし、すでに湿疹があるお子さまの場合は、未摂取の食物でもアレルゲンに身体が反応しやすくなっていることもあり、摂取後に症状が出る可能性も十分にあるため、医療機関にすぐ受診できる時間帯に初回摂取や増量を行うことが望ましいでしょう。
クルミアレルギーで完全除去を指導されていますが、今後食べられるようになりますか?
完全除去を指導されているということは、アナフィラキシーの既往があるか、血液検査上、症状が出てしまう確率がかなり高い状況だと思われます。このまま除去を継続した場合は成人になっても食べられる可能性はほぼ無いと思われます。