子どもの咳
咳は気道の分泌物や異物を外に出し、気道の閉塞や感染を予防する防御機能です。全ての咳は止めた方が良いというわけでは決してありませんが、咳が長引く場合は、適切な対応が必要になることがあります。
咳が出る原因は様々で、原因ごとに咳の仕方、時間帯、期間、治療(対応)方法は変わります。また、咳は自律神経の関係で一般的に夜間から明け方に多いとされており、咳が原因で夜間に寝られなくなってしまうことも多く、日中の活動や成長にも影響します。咳が続くことで体力やカロリーも消費してしまいます。小さなお子さまでは、咳や苦しい状況が長く続くと、体力や筋力が消耗して更に呼吸状態の悪化に繋がってしまいます。
子どもの咳が出る原因の多くは風邪に伴うものですが、3週間以上続く場合はそれ以外の可能性も考慮する必要があります。
このような症状がある場合はご相談ください
- 咳が2週間以上続いている
- 咳の症状が悪化している
- 息苦しい
- ゼーゼー・ヒューヒューといった呼吸音がある
- 鼻水や咳で夜間眠れない日が続いている
- ぐったりしている、食欲が落ちている
- 頭痛・耳の痛み・副鼻腔の圧迫感などが続いている
- 運動時に咳が出やすい
など
長引く咳の原因
感染後咳嗽
呼吸器感染症と診断された後に、咳だけ続く状態です。夜間の咳嗽が目立つことが多いです。感染後に気道が過敏な状態が続くことで咳が長引くこともあります。
気管支喘息・咳喘息
これまでに喘息の既往がある、アトピー素因や家族歴がある場合に気管支喘息や咳喘息を疑います。夜間や明け方、運動時に咳が目立つことが多いです。また、β刺激薬を使用すると症状が改善することでも診断します。
鼻・副鼻腔炎
風邪などの上気道感染の後に起こることが多く、咳とドロドロの鼻汁が続きます。後鼻漏、鼻閉、頭痛、顔面圧痛、嗅覚障害などの症状もあります。軽度の鼻・副鼻腔炎では対症療法のみで改善することもありますが、症状が長引く場合は、抗生剤の投与が必要になることがあります。
感染性咳嗽(がいそう)
通常の風邪では、2週間程度で咳は改善することが多いですが、複数のウイルスに連続して感染した場合は、3週間以上咳が長引くこともあります。一旦改善した後に、再度悪化したなどの経過があれば、感染性咳嗽を疑います。また、風邪から気管支炎や肺炎となってしまった場合は症状が長引くことが多いです。発熱の有無や診察、検査所見などを総合的に判断して、必要時に抗生剤の投与を検討します。マイコプラズマ感染症や百日咳といった咳が長引きやすい感染症が原因の場合は、抗生剤の内服が必要になることが多いです。
アレルギー性鼻炎
ダニや花粉、ペットなどのアレルゲンが原因となり、鼻汁、鼻閉、くしゃみを認めます。喘息に合併することも多く、通常の喘息治療でコントロールが不良な場合にアレルギー性鼻炎の合併も考慮します。また、鼻炎や副鼻腔炎も合併することもあり、その場合は鼻水がドロドロ、ネバネバしたものに変わります。アレルギー性鼻炎が原因による長引く咳を疑った場合は、抗ヒスタミン薬を処方して効果を確かめます。
気道異物
突然咳込みが見られることが多く、その前にピーナッツなどを食べていた場合やおもちゃを口に入れていた場面が確認されていればより疑わしくなります。実際には、親御さまの見ていないところで異物が気管に入ってしまうことも多く、その場合は診断が困難です。明らかに呼吸音に左右差があるなど気道異物が強く疑われる場合は、CT検査などの精査ができる高次医療機関へ紹介します。
胃食道逆流症
胃の内容物が食道へ逆流し、食道にある咳受容体を刺激することで咳が出ます。日中に乾いた咳が出たり、食後や夜間に横になると咳が出やすいなどの場合に疑います。肥満児に起こりやすいです。治療は年齢に応じて変わってきますが、食後や夜間の体位の調整を行い、必要時は胃酸分泌を抑えたり、胃の動きを改善する内服薬を試すこともあります。
心因性咳嗽
他の病気が否定されている状況で、就寝中には全く咳がない場合に疑います。心理的に負担がかかっている状況や場面で症状がより顕著になることがあります。心因性咳嗽が疑われた場合はカウンセリングを行い、同時に親御さまが病気の理解を得ることもとても重要です。
長引く咳の診断
1問診
- 咳の出始めは発熱も伴っていたか(感染症の確定診断があったか)
- 咳の出る時間が昼間や夜間か
- 湿性(痰が絡む、ゲホゲホ)か乾性(コンコン)
- 睡眠中にもあるか
- 既往歴、アレルギー歴、家族歴
など
2診察
3検査
4治療
上記で診断が確定しない場合はまず疑わしい病気に対して治療を行い、その効果によって診断をつける(診断的治療)ということを行います。
長引く咳でよくある質問
子どもの咳は何日続いたら受診するべきですか?
一般的に、咳が軽くても2週間以上続く場合や、日ごとに悪化しているように感じる場合は、受診を検討してください。また、ゼーゼーという呼吸音がある、息苦しそうにしている、顔色が悪い、水分や食事がとれないなどの症状がある場合は、早めの受診をお勧めします。
子どもの咳がひどい時はどうしたらよいですか?
まずは室内の空気を清潔に保ち、乾燥しすぎないよう加湿を心がけましょう。また、こまめに水分をとることで、喉の粘膜が潤い、咳が和らぐことがあります。1歳以上の場合ははちみつを摂取すると咳が改善することもあります。寝ている時に咳がひどい場合は少し体を起こしてあげると咳が和らぐ場合があります。咳がひどい時は症状の原因を見極めることが大切ですので、必要に応じて受診するようにしましょう。
咳がひどい時の楽な姿勢はありますか?
上半身を少し起こした姿勢が、咳を和らげるのに効果的な場合があります。横になると気道が狭くなりやすい、鼻水が喉に落ちやすいなどの理由から咳が出やすくなるため、クッションや枕を使って頭から背中にかけてなだらかに角度をつけるようにしましょう。乳児の場合は、親御さんは大変ですが、抱っこしたままの方が寝やすいこともありますので試してみましょう。
子どもの咳がひどくて吐いてしまうのはどうしてですか?
小さなお子さまは咳き込みが強くなると、咽頭反射が刺激されて吐いてしまうことがあります。特に痰が絡んでいたり、食後に咳が出たりすると吐きやすくなります。更に、胃の構造の違いからも成人と違って吐きやすい(逆流しやすい)という特徴があります。咳による嘔吐は一時的なことが多く、しっかり水分がとれていれば大きな心配はいりませんが、繰り返す場合やぐったりしている場合は医師の診察を受けてください。