子どもの感染症
子どもの感染症は、大人に比べて免疫力が未発達なためかかりやすい特徴があります。主な感染症には風邪、インフルエンザ、RSウイルス、手足口病、水ぼうそうなどがあり、発熱、咳、鼻水、発疹、下痢などの症状が見られます。飛沫感染や接触感染が多く、手洗いやマスク、予防接種が有効な予防策です。特に乳幼児は重症化しやすいため、早めに受診し、治療を行うことが重要です。まずは、日常的な健康管理と適切な予防対策で、感染拡大を防ぎましょう。
子どもに多い感染症
- RSウイルス
- 溶連菌感染症
- マイコプラズマ肺炎
- ヘルパンギーナ
- インフルエンザ
- 新型コロナウイルス感染症
- 風疹
- 麻疹(はしか)
- 水ぼうそう(水痘)
- 百日咳
- おたふく風邪(流行性耳下腺炎)
- 伝染性紅斑(りんご病)
など
RSウイルス
RSウイルスは、発熱や鼻水、痰の絡む咳を引き起こす感染症です。2歳までの子どもがかかりやすく、発熱が4~5日程度続くことも多く、鼻水や咳の症状は徐々に悪化していく傾向があります。特に1歳未満の乳児では細気管支炎や肺炎を伴い、重症化することが多い病気です。
溶連菌感染症
溶連菌感染症は、発熱、喉の痛み、発疹を引き起こす学童期に多い病気です。溶連菌の種類はA群、B群、C群、G群などありますが、A群が最も一般的です。中には急性糸球体腎炎やリウマチ熱など、重篤な合併症を引き起こすこともあるため、決められた期間しっかり抗生物質を内服することが重要です。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマは、学校や家庭内で広がりやすい細菌で、感染すると2~3週間の潜伏期間を経て咳や発熱などが現れます。自然に治る軽症なものから、入院が必要になる重症な肺炎まで様々です。心筋炎や脳炎などの合併症を引き起こすこともあります。治療には、マクロライド系、ニューキノロン系、テトラサイクリン系の抗生物質が用いられます。
ヘルパンギーナ
エンテロウイルスが原因で発症するヘルパンギーナは、発熱、喉の痛み、口内炎を伴う感染症です。症状が進行すると、心筋炎や髄膜炎といった重篤な合併症を引き起こすことがあります。手足口病との違いは、ヘルパンギーナでは口腔内のみに症状が現れる点です。基本的な治療は対症療法で、発熱や疼痛に対して解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンを使用します。
インフルエンザ
インフルエンザは毎年冬から春にかけて流行し、咳や鼻水の他、38℃以上の高熱、倦怠感、筋肉痛などの特徴的な症状がみられます。治療には抗インフルエンザ薬が使われ、重症化や合併症の予防のためにワクチン接種が推奨されています。ただし、インフルエンザウイルスは毎年異なる型が流行するため、毎年のワクチン接種が必要です。
新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルス感染症は、発熱や咽頭痛、咳、鼻水、頭痛などの症状を伴います。一般的に軽症なことが多いですが、基礎疾患のある子どもは重症化のリスクがあるため注意が必要です。治療は症状に合わせて対症療法を行います。
風疹
風疹は、風疹ウイルスに感染することで発症する感染症で、麻疹と似た症状が短い期間現れることから「三日はしか」とも呼ばれます。感染後、2〜3週間の潜伏期間を経て、さまざまな症状が現れます。
主な症状は、38~39℃の発熱、小さく盛り上がった赤い発疹(小丘疹)、リンパ節(耳介後部、後頭部などが多い)の腫れなどですが、風疹の発疹は麻疹とは異なり、色素沈着を残さずに消失する特徴があります。治療は主に対症療法になります。
妊娠初期の妊婦が風疹に感染すると、胎児に母子感染を引き起こし、先天性風疹症候群を発症するリスクがあります。先天性風疹症候群の主な症状は、難聴、心疾患、先天性白内障などです。
ワクチン接種が有効な予防方法です。
麻疹(はしか)
麻疹は麻疹ウイルスに感染することによって発症する感染症です。空気感染でも広がるとても感染力の強いウイルスです。感染後、10~12日間の潜伏期間を経て、様々な症状が現れます。
主な症状には、38℃前後の発熱、喉の痛み、咳、鼻水、目の充血、目やにに続いて、口内の頬粘膜にコプリック斑という白いぶつぶつが現れます。一旦解熱しますが、すぐに39℃前後に高熱が出て、発疹も出現します。発疹は初めに顔や首に現れ、その後全身に広がって、色素沈着がしばらく残ります。
治療は、主に症状を緩和するための対症療法が中心となります。肺炎や脳炎、中耳炎など様々な合併症を引き起こすこともあります。麻疹はワクチン接種が有効な予防法であるため、接種可能が時期になったら速やかに予防接種を受けることを推奨しています。
水ぼうそう(水痘)
水ぼうそう(水痘)とは、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染することで発症する感染症です。感染後、約2週間の潜伏期間を経て、かゆみを伴う、小さく盛り上がった赤い発疹(丘疹)が全身に現れます。38℃前後の発熱が数日続くこともあります。通常、発疹は数日以内に水疱へ変化し、その後かさぶたに変わり、痒みも治まっていきます。近年では、水痘ワクチンが定期接種になったこともあり、典型的な水疱形成が見られないケースも多いです。すべての水疱や丘疹がかさぶたに変わると、登園や登校が可能となります。
治療法としては、かゆみを抑え、水疱を早く乾燥させるための塗り薬を使用し、必要時は抗ウイルス薬の内服を行います。
百日咳
百日咳は百日咳菌に感染することで発症します。7−10日程度の潜伏期間の後に、通常のかぜ症状から始まり、徐々に咳が悪化していきます。短い咳が連続的に起こり、息を吸った際にヒューという音が出るという一連の流れが特徴とされますが、必ず起こるものではありません。数ヶ月間は症状が続くことが多いです。新生児や乳児期初期の場合、重篤な症状を引き起こし、入院治療が必要になることもあります。マクロライド系抗生剤などによる治療が必要になります。予防にはワクチン接種が重要であり、生後2ヶ月になったらすぐに接種しましょう。
おたふく風邪(流行性耳下腺炎)
おたふく風邪は、耳下腺と顎下腺が腫れて、顔の下側が膨らんだように見える病気です。通常、両側に症状が現れますが、片側のみのこともあります。主な症状は、発熱や頭痛など、風邪と似た症状ですが、放置すると無菌性髄膜炎や膵炎、難聴、卵巣炎、精巣炎などの合併症を引き起こすことがあります。特に難聴はワクチン未接種の方に多くみられ、聴力が回復しないことも多く、予防のためにワクチン接種を受けておくことが推奨されています。
おたふく風邪には特効薬がないため、治療は解熱剤などを使用して症状を緩和する対症療法が行われます。
伝染性紅斑(りんご病)
りんご病(伝染性紅斑)は、ヒトパルボウイルスB19に感染することで発症する感染症です。約2~3週間の潜伏期間を経て、微熱やかぜ症状が出現することがありますが、ほぼ無症状の場合もあります。更に7~10日ほど経った後、頬に紅斑が現れ、続いて四肢に網目状の発疹が広がるなどの症状が見られます。発疹は、約1週間で色素沈着せずに自然に消失します。発疹が現れた時には感染力はないため登園や登校が可能です。
治療は、症状に応じて対症療法を行います。発疹のみであれば基本は様子を見るだけで問題ありません。
妊婦さんが感染すると胎児への影響があり、感染した場合、約10%が流産や死産になるともいわれています。また、血液疾患(溶血性疾患)や免疫に異常がある方に感染すると重症化することがあります。
登園許可証が必要な感染症は?
登園・登校許可証が必要な感染症は、学校保健安全法に基づき「学校感染症」に該当します。各自治体で定められているルールに従い、適切に対応することが求められます。詳細は各お住まい地域のホームページにてご確認ください。
第1種(特に重大な感染症)
登園・登校禁止で、医師の許可が出るまで解除不可になります。
- エボラ出血熱
- クリミア・コンゴ出血熱
- 痘瘡
- 南米出血熱
- ペスト
- マールブルグ熱
- ラッサ熱
- ポリオ
- コレラ
- 鳥インフルエンザ(H5N1 など)
など
第2種(一般的な感染症)
感染症にかかると、一定の出席停止期間が設けられており、多くの場合、登園・登校許可証が必要です。特に、インフルエンザや水ぼうそう、おたふく風邪などの感染症については、自治体ごとに許可証が必要かどうかや、出席停止期間が異なる場合があるため、詳細はお住まいの市区町村のガイドラインを確認することが大切です。
感染症 | 登園・登校基準 (目安) |
---|---|
インフルエンザ ※鳥インフルエンザ・新型インフルエンザを除く |
発症後5日かつ解熱後2日(幼児は3日)経過するまで |
百日咳 | 特有の咳が消失するか、 5日間の適切な抗菌薬治療が終了するまで |
麻疹(はしか) | 解熱後3日経過するまで |
風しん (三日はしか) |
発疹が消失するまで |
水ぼうそう(水痘) | すべての発疹が痂皮化(かさぶた化)するまで |
おたふく風邪 (流行性耳下腺炎) |
腫れが出た後5日間かつ全身状態が良好な状態 |
咽頭結膜熱 (プール熱) |
主な症状が消失した後2日経過するまで |
結核 | 医師が感染の恐れがないと認めるまで |
骨髄炎菌性髄膜炎 | 医師が感染の恐れがないと認めるまで |
新型コロナウイルス感染症 | 発症後5日かつ症状軽快後1日経過するまで |
第3種(その他の感染症)
感染症によっては、病状に応じて医師の判断で、感染の恐れがないと認められるまでは出席停止となります。
- コレラ
- 細菌性赤痢
- 腸管出血性大腸菌感染症
- 腸チフス
- パラチフス
- 流行性角結膜炎
- 急性出血性結膜炎
- 溶連菌感染症
- マイコプラズマ肺炎
- 感染性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルスなど)
- 手足口病
- 伝染性紅斑(りんご病)
- ヘルパンギーナ
- RSウイルス感染症
など
その他の場合
- 第一種または第二種の感染症患者を家族に持つ家庭、または感染の疑いがある場合は、学校医や医師により伝染の恐れがないと認められるまで、出席停止となります。
- 第一種または第二種の感染症が発生した地域から通学している場合、その発生状況に応じて、学校医の意見を参考にした適切な出席停止期間が設定されます。
- 第一種または第二種の感染症の流行地を旅行した場合、その状況により、学校医の意見を基に適当と認める期間、出席停止が適用されます。