子どもの循環器疾患とは
生まれた時、心臓に何らかの異常のある人はおよそ100人に1人いると言われています。自然に治ってしまうほど軽い人もいれば、何回も手術をしなければならない人、心臓に負担をかけないよう運動を制限している人、残念ながら完治が望めない人など、さまざまな人がいます。
また、生まれた後に心臓病になる人もいます。ずっと薬を飲み続けたり、運動制限をして過ごす方もいれば、外科手術やペースメーカという心臓の働きを助ける器械の装着が必要な方や心臓移植が唯一の根本的治療になる方もいます。
心臓病の人は症状が出なければ普通の人と見た目は変わりませんが、症状が出ないよう、運動や日常生活に制限をかけて、自分で病気を調節しながら社会のなかで懸命に生きています。特に、心臓病を持つ子どもは、他の子どもと同じように遊ぶことや登校することができないこともあり、心の痛みを感じながら生活しています。
子どもの心臓病の初期症状(前兆)
子どもは大人とは違い、自分の症状を具体的に伝えることが難しいこともあります。そのため、親御さまが注意深く見ていかなければなりません。
また、以下の症状に加えて、乳児早期では心臓に負担がかかることで、呼吸が苦しくなり、哺乳量が減るため体重増加が乏しいことがあります。幼児期以降では、これまで行えていた運動や階段昇降などが急にできなくなった場合は、心臓病を発症した可能性も考慮します。下記のような症状がある場合、直ちに医師の診察を受けるか、定期的に小児科で健康診断を行うことをお勧めします。
- 息切れがしやすい
- すぐに疲れてしまう
- ぐったりしている
- 爪や唇の色が青い又は紫
- 動悸がある、心拍数(ドキドキ)が早い
- 失神する
- 胸痛(胸を痛がっている)
など
子どもの胸痛は心の病気?
子どもが「胸が痛い」と言うと親御さまの多くは心臓の病気があるのではないかと心配になると思います。しかし、子どもの場合、胸痛の原因が心臓の病気である可能性はごく稀です。特に原因のない特発性と言われるものや筋骨格系の痛みであることが多く、必要時に痛み止めを飲むことで対応できる場合が多いです。その他には、肺の一部が破れてしまう気胸、胃食道逆流症、外傷などの病気では痛み止め以外にも治療が必要になることがあります。
胸痛に加えて、冷や汗をかいている、呼吸も不安定で動くことすらできないなどといった場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
また、先天性心疾患の術後や川崎病の冠動脈合併症を指摘されている場合は、心臓が原因の胸痛である可能性もあるため、速やかにかかりつけ医へご相談ください。
子どもの循環器でよくある病気
川崎病
4歳以下の乳幼児に多く見られ、全身の血管に炎症が起きる病気で、『全身の色々なところが赤くなる』症状が特徴です。また、BCGの痕が赤くなることも特徴の一つです。以下6つの症状のうち5つ以上の症状があれば川崎病の診断になります。
川崎病の治療
必ず入院治療が必要になります。免疫グロブリン製剤の点滴加療とアスピリンの内服加療が行われます。必要に応じてステロイドの点滴加療などその他の治療が追加されます。特に合併症がなければアスピリンの内服は計1~2か月間内服します。
川崎病の合併症
多くの方が後遺症なく改善する病気ですが、中には冠動脈という心臓を栄養している血管が拡張し、瘤(こぶ)ができる合併症をきたす場合があります。冠動脈の拡張がみられた場合は、内服薬を長期に服用したり、カテーテル治療が必要になる場合もあり慎重に経過を見ていく必要があります。
川崎病の経過観察
入院中はもちろんのこと、退院した後にも冠動脈の合併症が出現しないか外来で経過観察を行う必要があります。罹患してから5年間は経過を見ていく必要があります。当院でも超音波検査や心電図検査などを使用してフォローすることも可能です。冠動脈の拡張が重度の場合は、定期的にカテーテル検査が必要になるため専門施設でのフォローをお願いすることがあります。
心雑音
かかりつけ医による診察や園・学校での健診において心臓に雑音が聞こえると指摘されるケースがあります。心雑音を認めた場合、当院では聴診や超音波検査などを用いて、心雑音の原因を調べることが可能です。病気が見つかった場合は当院でフォローすることもできますが、重症の先天性心疾患が見つかった場合は、専門施設へ紹介させていただきます。
乳幼児健診や学校健診などで初めて指摘された心雑音の多くは機能性雑音(無害性心雑音)と呼ばれる異常のない雑音であることが多いです。専門医でないと、雑音を聞いただけで判断することは難しく、病的な雑音である可能性もありますので、健診で心雑音を指摘された方は当院までご相談ください。
不整脈
胸がドキドキする、脈が飛んでいる気がするといった症状の中には不整脈の可能性があります。当院では心電図検査や超音波検査を用いて異常がないか判断していきます。より詳細な検査やカテーテル治療が必要な場合は、連携医療機関に紹介させていただきます。
学校心臓健診
小学校1年生、中学校1年生、高校1年生に対して学校心臓健診が実施されています。不整脈をはじめとする心電図異常や心雑音が指摘されることがあります。多くは経過観察のみとなることが多いですが、場合によってはより詳細な検査が必要になる場合もあります。実際に学校心臓健診がきっかけで、初めて先天性心疾患に気が付くケースもあります。異常を指摘された場合はお気軽に当院までご相談ください。
健診で『心臓に雑音がある』と指摘された方へ
学校健診等で指摘される心雑音のうち、多くは機能性雑音(無害性雑音)と呼ばれる問題のない雑音です。もちろん、病的な心雑音の可能性もありますので、必要に応じて心臓超音波検査・胸部レントゲン検査などを行い、心疾患の有無を評価する必要があります。
当院では、超音波検査を実施することができます。心雑音の原因のほとんどは超音波検査で診断が可能です。より専門的な検査(カテーテル検査等)や治療、 手術が必要と思われる場合には、 適切な高次医療機関へご紹介とさせて頂きます。
小児循環器のよくある質問
子どもの心拍数が早い理由はどうしてですか?
子どもの心臓は大人よりも小さく、一度に送り出せる血液の量が少ないため、心拍数を速くして体全体に必要な血液と酸素を届けています。また、子どもは基礎代謝が高く、成長や活動に多くの酸素を必要とするため、心拍数が自然と高くなります。
子どもの心拍数の正常値はいくつですか?
子どもの心拍数は、年齢によって大きく異なります。成長するにつれて心臓のサイズも大きくなり、代謝も落ち着き、自律神経も成熟することで心拍数は少しずつゆっくりになっていきます。
- 新生児 (0~1歳):120~160回/分
- 乳児 (1~3歳):100~120回/分
- 幼児 (3~6歳):80~100回/分
- 学童 (6~12歳):70~90回/分
- 思春期 (12~19歳):60~80回/分
子どもの心疾患の原因は何ですか?
多くは胎児期に心臓が形成される過程で、遺伝的要因や環境要因が複雑に影響して発症すると考えられています。また、妊娠中の喫煙や飲酒、風疹感染、特定の薬の服用などがリスクを高めることも知られていますが、明確な原因が特定できない場合も少なくありません。