子どもの胃腸炎とは
胃腸炎とはウイルスや細菌などが経口感染(糞口感染)することで下痢や嘔吐、発熱、腹痛などを伴う病気です。多くはウイルスが原因であり、治療は脱水の改善や症状に対する対症療法を行います。頻回の嘔吐や下痢が続き、経口摂取が十分できない場合は脱水になる可能性があり、特に乳幼児には注意が必要です。尿が半日以上出ていない、ぐったりしている、呼びかけに対する反応が乏しいなどがあれば早急にかかりつけ医に受診しましょう。
ウイルス性胃腸炎と「おなかの風邪」は違う?
「ウイルス性胃腸炎」は、「おなかの風邪」とも呼ばれ、ウイルスが胃や腸に感染して消化器の働きが乱れることで、急な嘔吐や下痢を引き起こす病気です。別名として「吐き下し」や「嘔吐下痢症」などの呼称もあります。代表的な原因ウイルスには、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスなどが挙げられます。
ウイルス性胃腸炎
胃腸炎の中で最も頻度が多い病気です。代表的なものとしては、ロタウイルスとノロウイルスです。これらのウイルス感染による胃腸炎では、嘔吐、下痢、発熱などの似たような症状を認めるため、症状だけでウイルスを特定することは困難です。しかし、どのウイルスが原因でも必要な治療は原則同じであるため、ウイルスの特定は必須ではありません。
ロタウイルス胃腸炎とは
乳幼児の胃腸炎において主な原因ウイルスでしたが、ワクチンが始まったことにより患者数や重症化する頻度は減ってきました。2~5月ごろに流行します。
症状としては、急に嘔吐が始まり、その後水様下痢を認めるケースが多いです。酸臭を伴う白色下痢を伴うこともあります。嘔吐は1~2日程度で、下痢は5~8日程度で改善することが一般的です。
重症化すると、脱水症になってしまうこともあります。尿回数が少ない、ぐったりしているなどの症状を認めている際は、早めにかかりつけ医に受診しましょう。
ロタウイルスに複数回感染することもありますが、感染を繰り返すごとに症状は軽くなっていきます。
ロタウイルスの感染経路、潜伏期間
症状の出る数日前から便中にウイルスが存在します。潜伏期間は、通常48時間未満とされています。ロタウイルスは、便中で数週~数か月間の感染力を持っており、とても感染力の強いウイルスです。
集団保育の環境で吐物や下痢便が付着した場所や衣類、おもちゃなどを介して経口感染で拡がります。家族内で感染が広がることも多いです。汚染物の適切な処理や環境の清掃が感染対策に重要です。
ノロウイルス胃腸炎とは
胃腸炎を起こすウイルスで最も頻度が高いウイルスです。10月末から流行し始め、流行のピークは12月のことが多く、初夏まで続くこともあります。
症状は嘔気、嘔吐、下痢、発熱などがあります。ロタウイルス胃腸炎よりは比較的症状は軽いとされ、多くは数日の経過で自然に回復します。
ノロウイルス胃腸炎の感染経路、潜伏期間
潜伏期間は通常1~2日程度であり、数少ないウイルス量でも感染してしまう非常に感染力の強いウイルスです。
原則は吐物や下痢便が付着した場所や衣類、おもちゃなどを介して経口感染で拡がります。
また、カキに代表される汚染された二枚貝など、食中毒の感染源としてもよく知られています。
また、ノロウイルスが空気中に舞って、それを吸い込むことで感染する飛沫感染というケースも報告されており、適切な汚染物の処理と環境清掃も重要となります。
ウイルス性胃腸炎の感染対策
ロタウイルスもノロウイルスもアルコールの効果が乏しいため、石鹸と流水による手洗いが必要です。食前や調理前、汚物を処理した後にはしっかり手洗いをしましょう。
汚物の処理をする際は、手袋とエプロン、マスクを着用し、次亜塩素酸ナトリウムで消毒しましょう。
ウイルス性胃腸炎の治療
原因がウイルスであるため、原則必要な治療はありません。脱水が疑われる場合は、経口または点滴で水分の補充を行います。嘔吐に対しては制吐剤(吐き気止め)、下痢に対しては整腸剤が処方されることが多いですが、残念ながらそこまで効果が得られないことが多いです。
下痢止めと言われる薬もありますが、感染症に伴う下痢であれば使用してはいけない薬と思ってよいでしょう。下痢止めを使用することで、逆に症状が長引いたり、悪化することがありますので、ウイルスを体外に排出するためにも下痢止めを使用することは避けましょう。
ウイルス胃腸炎のよくある質問
胃腸炎後の登園の目安(何日休む)はありますか?
まずは嘔吐を丸一日認めず、最低限の水分と食事が摂れていることを確認しましょう。下痢に関しては、水溶性の下痢が頻回に認めている間は、園で漏らす可能性もあり、感染を広げるリスクは高いため、登園は控えましょう。便の形が出てきて、1日1~2回程度に減ったら登園の目安と考えましょう。
頻回に嘔吐をしていますが脱水症になっていないでしょうか?
胃の中のものが全て出たからといってすぐに脱水になることはありません。嘔吐が治った後に、少量ずつミルクや母乳、経口補水液を再開すれば脱水症になることは少ないです。少量の水分摂取でも、直後に嘔吐してしまう状況が長く続けば、脱水症になることもあります。尿回数が少ない(半日以上出ない)、ぐったりしている、泣いても涙が出ないなどの症状を認める場合は、脱水症になっている可能性があるため、早めにかかりつけ医を受診しましょう。
また、ウイルス性胃腸炎の嘔吐は通常数日以内に治ることが多いため、嘔吐が長く続く場合はウイルス性胃腸炎以外の可能性を考慮する必要もありますので、その点についてもかかりつけ医で相談しましょう。
ウイルス性胃腸炎は大人もかかりますか?
胃腸炎の原因ウイルスは感染力が強いものが多く、家族内で感染が広がることも多いです。子どもに胃腸炎症状を認めた場合は手洗いなど感染対策をより強化していきましょう。
ウイルス性胃腸炎は何日で治りますか?
通常、ウイルス性胃腸炎の症状は1週間程で改善します。ただし、年齢や体調によって回復にかかる時間は異なる場合があります。脱水症状を防ぎながら安静に過ごすことが大切です。症状が1週間以上続く場合や症状が悪化した場合は、早めに受診するようにしましょう。
ウイルス性胃腸炎でヨーグルトを食べてもいいでしょうか?
症状が強い間は消化に負担がかかるため、ヨーグルトなどの乳製品は控えたほうが無難です。症状が落ち着いてから、少量ずつ試してみるのが良いでしょう。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内環境の改善に役立つ場合もありますが、下痢が続いている場合はヨーグルトの摂取により、逆に下痢を助長させる可能性もあるので注意が必要です。